快晴だけどもよーく冷え込んだ朝のバンクーバー.来る前に調べたら,最高気温はだいたい5度,最低は0度ということで,完全になめてきた.つまり,薄手の手袋しか持ってこず,帽子,耳当て,マフラーは持ってこなかったのだ.しかしこんなにバンクーバーが寒いとは!晴れるのはよいが連日の零下.雪が無い分,よけいに寒い.そんなバンクーバーをお寒い装備で歩き回るのは結構辛い.手袋を買おうものなら,なんで持ってこなかったの!家にあるでしょ!と妻に言われるのは必至.なんとかしのぐしかない.
そんなことを考えているうちにThe Look Outへ到着.地下1Fのエレベーター前の受付でチケットを購入.四枚とも異なる絵柄のものを選んでくれた.そしてエレベーターで展望台へ.軽快なスピードで上昇.ガラス張りのエレベーターからはヴァンクバー市内がみるみる広がっていく.あっという間に展望台へ.足のすくむ高さだ.そして今まで見上げてきた摩天楼たちが今は目の前に広がっている.展望台は360度の景色を歩いて見回せる.札幌のセンチュリーロイヤルホテルのように回ってはくれない.それにしてもここからの景色は圧巻の一言.スターウォーズに出て来る銀河共和国の首都コルサントのようだ.違いは北側に湾を挟んで連なる雪山が眺められること.このような雪山は東の彼方にも小さく見える.あれがもしかしてカナディアンロッキー?摩天楼たちと雪の山脈のコントラストに,人間の偉大さと自然の雄大さを感じる.
さて,次は皆さんお待ちかねの餌やりタイム.といってもここからStanley Parkまでは結構な距離.港沿いに歩き,カナダプレイスを通り過ぎると,カナダプレイスと同じくらい巨大な建物が.バンクーバーコンベンションセンターだ.たしか今年行われたバンクーバー冬期オリンピックの名残だったような.やっぱり!その隣にはテレビでもおなじみの聖火台がある.テレビで見るより小さく見えるのは隣の建物がでかすぎるせいか.写真撮影をすませて先を急ぐと水上飛行機のたまり場が.ここが飛行艇による空中遊覧の出発地点だった.近づいてみると,銀色のコンテナから自転車を引っ張りだしている東洋系のお兄さんと,コンテナ前に並ぶ自転車たちを発見.こんなところにレンタサイクルの店が.ガイドブック等で調べたところではダウンタウンに何軒かあるようで,先日Slanley Parkに行く時に寄って行ったが,かなり高かった.だいたい大人も子供も1時間10ドル程度だった.ところがここは大人6ドル,小人3ドルと破格の値段.迷わず2時間レンタルし,Stanley Parkを一周しがてら餌やりをすることに決定.
久しぶりに乗る自転車に家族一同大喜び.そして何よりよく手入れされた高級そうなマウンテンバイクは,普段乗っているママチャリとは乗り心地・走り心地が違う.喜び勇んで出発するが,すぐに困難にぶちあたる.そう,手がめちゃくちゃ寒い!寒いというより痺れ,すぐに感覚がなくなる.これから2時間もこの寒さに耐えねばならぬかと思うと,先ほどのうきうき気分も,魚を出されたプーチンの耳のごとく萎えてしまう.しかしそうも言っていられぬので,ジャンバーの袖に手を入れて,とりあえず寒さをしのぐ.ヨットハーバーを抜け,雪山を背後に抱えるノースヴァンクーバーを見渡せるStanley Parkの海岸線を自転車で走るのは爽快,と言いたいが,寒さでそれどころではない.どうもそれは私だけではなく,他の家族もそうだったようだ.巨大な岩がせり出した細い自転車道は,岩からしたたる水でところどころ凍結していて,かなり怖い.寒さと凍結した路面とで,ゆっくり景色を楽しむ余裕はなかった.ましてや餌やりなど悠長なことをしている心の余裕はなかった.景色と餌やりはまた後日ということで,寒いけれども,自転車でStanley Parkを一周するという地元民的気分を満喫できた.そして自転車を凍えながら返却すると,借りた時とは違う白人の兄ちゃんが,コンテナの裏あたりを指し,そこでコーヒーとマフィンをサービスしてるから寄ってけと言う.言ってみると,水上飛行機観光客のための待ち合いラウンジだった.恐る恐るカウンターのお姉さんにコーヒーいいかと訊くと,笑顔で"Sure"と返ってきた.子どもたちにはチョコレートとアップルジンジャーをついでくれた.かじかんだ両手でコーヒーカップを抱え込んだ時の幸せな気持ち.あー生きててよかったと思う瞬間であった(明らかに大げさだ).そうこうしているうちにもく午後の1時半.お腹が空いたという子どもたちは,私の嫌いなMacに行きたいという.日本とはメニューが違うから行きたいのだと.するとすぐにカナダプレイスの南側のビルの地下に発見.幸いなことにフードコートになっている.子どもたちはMacを,我ら夫婦はピザ二枚と32オンスのroot beerをシェア.妻によると,root beerはアメリカ発祥の炭酸飲料らしく,こちらの人たちが好む飲み物らしい.うん,北海道民にとってのガラナみたいなもんだな.このroot beer,湿布を溶かして飲んでいるような風味がする.まあ飲めなくはない.が,しかし,この32オンスという量は異常だ.娘のSサイズのカップですら,日本のLサイズに匹敵するのに,その三倍はあろうかという巨大さ.日本の映画館でポップコーンが入っているのがこのくらいではなかろうか.とはいっても,水物ならいくらでも入るのであっという間に完飲.ピザ一切れも巨大だった.こんなセットをこっちの人たちは一人で食べるのかしら?と妻が言うので,なんぼなんでもシェア用だろうと答えていると,すぐ近くで同じセットを一人でたいらげるビール樽のようなおっちゃんを発見.そりゃあそういう体型になるわな.
腹ごしらえの後は再びThe Look Outへ.昼下がりのバンクバーは,日がすでに傾き始め,朝の澄み切った空気から,柔らかく街を包み込む気配に包まれていた.またもや写真をバシャバシャと撮り,見事な景色に感嘆の声をもらし,展望台を後にした.展望台はGas Townにほど近く,先日Gas Townのお土産物屋でみかけたオリンピックデザインのマリンブルーのパーカーが気になっていたので,再度見に行った.しかしXLとかXXLとかいうサイズしかなく,購入を諦めた.店を出ると,まだ3時半だというのに,空の裾がうっすら赤く染まっている.妻がEnglish Bayに沈む夕日をビーチから見たいから,ぶらぶら歩いて行こうと言う.私と息子は,夕日を見たいならそんな悠長なことを言っている場合ではないと,家族全員早足でビーチに向かう.しかしやはり間に合わない.4時にはビーチに行っていないと行けないことが分かり,明日再チャレンジすることにする.もうホテル近くまで戻ってきてしまったが,すでに暗くなりかかっているので,歩き疲れた子どもたちにむち打ち(ひど!),夜景を見るためにThe Look Outを再び目指す.The Look Out近くで朝見つけた100円ショップに寄り,金たわしとポテチを購入.どうも我が家は海外に来るとポテチを買いたがる癖がある.いざ展望台へ.柔らかな暖かみのあるオレンジ色が灯る摩天楼たちを,青さの残る薄暗がりの空が覆う.西側の空の下にはまだ夕日が尾をひいている.そんな昼間の名残を惜しんでシャッターを押していると,ほどなく暗闇に包み込まれる.暗闇を払いのけるかのようなオレンジ色の光.人間は今でも暗闇が怖いのだということを感じさせる.我々の目は,暗さに敏感に反応するようにできている.暗闇との戦いの最後の砦がこの摩天楼たちなのかもしれない.我々は今日一日,寒さとの戦いだったけど.
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