2011年8月29日月曜日

交流分析の基礎:自我状態

大阪では交流分析士2級講座というものを受けてきました.企業を辞めてからのこの10年,ずっと授業をする側だったので,とても新鮮な経験でした.朝の9時から夕方6時まで,それを5日間,こんなに集中した日々は久しぶりです.それだけいろいろ考えさせられ,有益な講座でした.
さて,交流分析(Transactional Analysis: TA)とはカナダ出身の米国の心理学者,エリック・バーンが開発した心理カウンセリングの手法です.バーン博士が,アル中患者のカウンセリングを行っている中で,患者の人格が急に変わることに気づいたことに基づいています.この知見によると,私たちの心の中には常に3つの自我があります.Parent(親),Adult(成人),Child(子供)です.
私たちが生まれてから,まず最初に形成される自我はChildです.この自我は親(養育者)との関係性によって形成されます.通常の場合,生まれてからハイハイができるくらいまでの期間は,私たちは何をしても許されます.泣けばおっぱいをもらえたり,だっこしてもらえたり,おむつを替えてもらえたりします.そして笑えば誰もが喜んでくれます.その全存在をありのままに受け入れてもらえる状態です.
しかしハイハイができるようになり,自分で動けるようになると,親との関係性が変化します.それまですべて受け入れられてもらえた関係から,親からの禁止と許可による関係性へと変化します.それを食べていいのかだめなのか,そこへ行っていいのかだめなのか,といった関係です.
このようにChildという自我には二つの働き(機能)があります.前者のようにありのままに振る舞えるFree Child(自由な子供)と,後者のように親の禁止と許可に従うAdapted Child(従順な子供)です.そしてそれに対応してParentにも二つの機能があります.Free Childを培うNurturing Parent(養育的な親)と,Adapted Childを培うControlling Parent(支配的な親)です.
生後数ヶ月もすると私たちは親が自分たちに向けた行動や感情を,私たちのParentの自我として蓄積していきます.そして12歳頃までに私たち「らしさ」が形成されます.母親(Nurturing Parent)との触れ合いが少ないと,大人になってから他者に親愛の情を示しにくくなる傾向にあります.逆に父親(Controlling Parent)との触れ合いが少ないと,社会的な慣習や規則を守りにくかったり,自分の存在価値をアピールしにくくなる傾向があります.
私たちが成長していくと,このような親子関係を超えて,自分の置かれている状況や自分自身の状態を客観的に把握し,論理的に判断して行動できる状態になります.この時の自我状態がAdult(成人)です.私たちは2歳前後になるとままごと遊びを始めますが,これは親を客観的に見て理解したことに基づいた判断と行動です.私たちがAdultの自我を十分に成長させ,一人前に活用できるようになるのは12歳頃だと言われていますが,知識や経験を積むことによりそれ以後も発達して行く自我です.Adultの自我は脳の前頭前野の発達と関係するのでしょう.前頭前野が神経細胞的に完成するのは二十歳過ぎと言われていますので,そのくらいまでは発達し続ける自我なのだと思います.
交流分析は,自分と他者の3つの自我状態と5つの自我機能がどのように関係し合っているのかを分析することにより,自分と他人を理解していくことが基本となります.

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