2011年8月30日火曜日

交流分析の基礎:機能分析

3つの自我状態と5つの機能は上のような3つの円による模式図で表されます.Childの円が一番下で,Parentの円が一番上,その間にAdultの円がきます.ChildとParentの円はそれぞれAdultの円の最下端と最上端とで接するのがポイントです.ChildとParentの自我状態にはそれぞれ二つの機能がありますので,それぞれの円を半分に切り分けて表示します.この切り方は縦でも横でもいいようです.
私たちは日常生活の中で,いろいろな事を考えたり(思考),感じたり(感情),行動したり(行動)していますが,それにはこの5つの機能のどれかを使っています.これら5つの機能はどれが良くてどれが悪いということはありませんが,私たちは自分に馴染みの深い機能を使いがちです.それぞれの機能には良い面(肯定的側面)と悪い面(否定的側面)とがあります.自分がよく使ってしまう機能とあまり使わない機能を把握するとともに,それぞれの機能の肯定的側面と否定的側面を理解しておくことにより,自分を変えることができます

CP: Controlling Parent
「相手のためを思って自分の価値基準で思考・感情・行動」
  • CPが適切に働いていると,正義感が強く,道徳的で,規則を守り,責任感があり,他者を教え導くといった,肯定的側面が出ます.
  • CPが過剰に働くと,権威的・封建的であり,批判的で,偏見に満ち,独断的で,執着心が強く自分の意見を他者に押し付ける,といった否定的側面が出ます.
  • CPが不足すると,責任感がない,意思決定できない,態度が曖昧,ルーズ,他者の言ったことを鵜呑みにする,など,他者の信頼が得られなくなります.
NP: Nurturing Parent
「相手のためを思って相手の価値基準で思考・感情・行動」
  • NPが適切に働いていると,思いやりがある,優しい,包容力がある,他者を励ましたり勇気づけたりする,相手を信頼する,といった肯定的側面が出ます.
  • NPが過剰に働くと,世話を焼きすぎる,相手を甘やかす,お節介,親切の押し売り,相手に過剰に期待する,といった否定的側面が出ます.
  • NPが不足すると,周囲の人に関心がなく,冷淡で,誰にも愛情が持てず,仲間を受け入れたり,相手を配慮したりすることができない,など,他者に敬遠されてしまいます.
A: Adult
  • Aが適切に働いていると,計画的で,事実に基づいた論理的な思考や行動ができ,周囲の状況を冷静に観察し,その場に応じた適切な判断が取れるといった,肯定的側面が出ます.
  • Aが過剰に働くと,機械的で打算的,非人間的,温かみがない,口先だけで行動が伴わない,といった否定的側面が出ます.
  • Aが不足すると,無計画で場当たり的,情報に疎く,周囲に無頓着,など,人間関係に悪影響が出ます.
FC: Free Child
「自分のためを思って自分の価値基準で思考・感情・行動」
  • FCが適切に働いていると,明朗快活,自発的で何事にも意欲的に取り組み,創造的で,やる気があり,行動的,といった肯定的側面が出ます.
  • FCが過剰に働くと,お調子者で羽目をはずしがちで,自分勝手で軽率な振る舞いをし,自己中心的でわがままに振る舞ったり,横柄な態度をとったりするなど,否定的側面が出ます.
  • FCが不足すると,思ったように動けなくなり,気分転換ができず,無気力・弱気になり,萎縮して気力が乏しく,何事も楽しめなくなり,否定的感情を引きずり人間関係に悪影響が出ます.
AC: Adapted Child
「自分のためを思って相手の価値基準で思考・感情・行動」
  • ACが適切に働いていると,協調的で慎み深く,気配りが上手で,相手の言うことを素直に受け止め,平和的で穏やかな対応ができるなど,肯定的側面が出ます.
  • ACが過剰に働くと,依存心が強過ぎ,卑屈になり,安易に妥協し,指示されたことしかできなくなる反面,その反動が爆発するなど,否定的側面が出ます.
  • ACが不足すると,他人の言う事を聞かずに頑固で,意地を押し通し,協調性が欠如するなど,人間関係を阻害するようになります.
これら5つの機能を場合に応じて使い分けられるようになることがよいようです.そのためにはAの機能が十分に働いている必要があります.なお,私が講習を受けた「特定非営利法人 日本交流分析協会」では,Adultにおける肯定的側面と否定的側面とを説明していますが,国際TA協会ではAdultには肯定的側面しかないとしています.欧米ではAが高いことが良しとされているのに対し,日本では,「知に働けば角が立つ」のとおり,Aが高すぎるのは人間的に好ましくないとされる風潮があるためのようです.

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