そして社会構成主義では「言葉」によって現実が作られると考えます.科学的知識も言葉によって作られるのです.言葉は文化に依存します.科学的知識は文化に依存しない普遍的な事実であるように考えられがちですが,科学的知識も,科学者というコミュニティの中で通用する専門用語によって形成された,偏ったものであることが社会構成主義に基づく研究により明らかにされています.
このような社会構成主義に基づくフィンランドの教育では,社会的な対話が重視されます.先生と生徒,あるいは生徒同士の対話だけでなく,先生と保護者,生徒と保護者の対話も含まれます.さらに,生徒と社会の対話も重要です.新聞やインターネット,書籍,メディアなどを通じて,生徒は社会と対話しながら知識を形成していきます.フィンランドの教育では,生徒に対話の仕方を教えていると言っても過言ではありません.
また社会構成主義では先述したように,普遍的な知識あるいは事実というものはないと考えています.したがってフィンランドの教育でも「正しい知識」が存在しているとは考えません.生徒たちが他者との対話を通じて形成する知識がすべてであり,その知識は生徒たちの対話のレベルや対象の拡大によって変化していくものなのです.
以上のことから,「フィンランドの教育とは対話である」というメタファーが可能だと思います.
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