ゲシュタルト心理学のはじまりは、Max Wertheimerによる仮現運動(驚き盤運動)の研究です。たとえば、一本の線がある場所に短時間だけ示され、その直後に別の一本の線が別の場所に短時間だけ示されると、人間は、線が移動したと知覚するそうです。これが仮現運動です。Wertheimer以前の心理学では、この知覚現象は人間の「錯覚」だとされてきました。
その反証の一つとして、Wertheimerは、仮現運動が実際の運動を同じものであることを示しました。実際の運動では、たとえば一本の線が実際に移動している様子をある一定時間見続けた人は、見続けた後に静止した線を見ると、それまでの運動とは反対方向にその静止した線が動くように見える(運動の負の残像)。このような現象が仮現運動でも起こることを、Wertherimerは示した。Wertherimerとは別に、生理学者のExnerも同様の証拠を示した。
このことは、アニメの登場人物たちが実際に動いているように見えるのと同じです。アニメの登場人物たちは静止画が素早く入れ替わることにより動いているように見えます。このようなアニメの原理を知っているからといって、アニメの登場人物たちが動いていないように見えるわけではありません。人が実世界の中で実際に動くことと、アニメの登場人物たちが動くこととは、私たちの知覚にとってはいずれも「現実」なのです。
ではなぜアニメを実際に動いていると私たちは認識してしまうのか、というと、静止画と次の静止画とは独立のものではなく、お互いに何らかの影響を及ぼし合っている(相互作用)からです。従来の心理学では、ある局所的な事象はその周囲に現れるものから独立だと見なされていました。しかしゲシュタルト心理学の出現により、ある状況に対して私たちが個々に知覚しているモノたちは相互に関係し合っていることが示された。上に示した図形を見てください。渦が見えます。しかし、実際には同心円の集まりなのです。このように私たちの知覚は、個々の刺激を集めたものとは異なるものを実際には知覚しているのです。
2009年5月19日火曜日
ゲシュタルト心理学
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